第二章 禁断・はぎ香〈21〉
わたしは、忘れていたいと思うそのことを持ち出されて動揺してしまった。どうして、どうして、もう忘れたい、いいえ、もう忘れたこと、もうとっくに、どうでもいいこと、思い出したくないことを、と恨んで青樹を見つめた。けれど、わたしのその目を受け止めて、青樹は穏やかな表情で言った。
「こんな言い方をする僕を卑怯と思うだろうね。でも、強姦というのは、日頃から女性をナイガシロに思っていたり、自分が女性から生まれたことも忘れて女性を軽蔑していたりして、そして、折りあらば辱めて生きていられないようにしてやりたいと、いつも女性に対して、そんな非情な冷酷な心でいる男の行為だと、そう感じるんだ。でも、そうすると、僕なんて幸か不幸か、どんな人でも女性だというだけで、もう、可愛いと思ってしまうタチなんだもの…。君は特に可愛いと思った。君にはもっと触れたいと思った。でも、だからといって君に対して、あんな風に思い遣りなくしてしまったことは、やはり、いけなかったと恥じているけれど。でもね、僕は一度だって君をどうにかしてやりたいなんて卑しい気持ちで見たりしなかった。君を辱めてやろうなんて、そんな酷い気持ち、絶対に持っていなかったよ。自分に負けて、したいようにしてしまったのはいけないけれど、僕の中では、とても自然なことだった。君としたいと思った…。自分の方から、そんな風に感じた女性は君が初めてだった…」
聞きながら、わたしは、あの時、バスルームで青樹が、わたしに向かって言っていた言葉が少しずつ思い出された。青樹はわたしの腕に触れて声を落とした。
「嬉しい。あれから一度も僕を見なかった君とこうして話せるなんて」
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