第二章 禁断・はぎ香〈20〉
「僕、二~三週間あとにD村を出ようと思うのだけど、君が…君をひっさらってったりしたら、光彦にブン殴られるだろうからね、君が予選校を終了して男と暮らすなんて光彦は、きっと、許さないから。やめておくけど。はぎ香、僕がいなくなっても寂しくない?」
無言のわたしに青樹の溜め息が漏れた。
「僕は光彦が羨ましいんだ。君の兄だというのに、まるで恋びとのように君に慕われて。一層、君と僕が兄妹だったら良かったのに…なんて考えて、君のお父さんのこと、もう一度聴いてみたくなった。でも、今、写真を見せてもらって、すごく納得した…君のお父さんと僕は似てないって」
と、青樹は言うの。
「君のお父さんは、僕なんかと違って、とても誠実そうだし、それに、何か、自分自身と闘い続けているような、そんな美しさが身についている…今の僕よりずっと大人びていて、僕とは違っているもの。ね?」
と、青樹は意外にも明るい目になって、わたしを見る。
「僕は乱暴で不誠実で、すぐ自分に負けてしまう弱い男」
と、思い返すように言って目を伏せた。あの表情だと見つめるわたしに、さらに青樹は言った。
「だけどね、はぎ香、君のためにも聴いて欲しいんだけど、あれは…あれはね、強姦なんかじゃない」
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