第二章 禁断・はぎ香<18>
洗い晒して真白い上着の清潔な匂いと、髪からの甘い香りがする中で、まるで愛していると言われているみたいに、あの時のように、やさしい手。
『はぎ香…』と言ったまま動かなくて、わたしはじっと、そんな青樹を支えてあげているような気持ちになって立ち尽くした。自分で自分が解らなかった。気持ちはまるで兄妹のように、形はまるで恋人同志のように時が流れ、傍を通って行く人の静かな足音に気が付いて、青樹はわたしを離し、それでも、まだ、やさしい子どものような眼差しで、わたしを包んで、
「はぎ香、今、僕を抱いた」
と、嬉しそうに言う。
「この前、とても悲しいことがあった。君が僕のすぐ傍を通って、それなのに、君は気が付かず行ってしまった。知らんぷり…だったら、まだ嬉しいけれど、君は全然、僕に気付かなかった。君はどうして、そんなに冷たいのだろうって悲しかった」
「悲しいとか、淋しいとか多く言う人、女々しくて嫌いよ。」
「そんな風に生意気に言う君も好きだよ」
「…」
「本当は僕よりもまだ寂しがり屋だったりして」
と、見透かすように言って、じっと観ている。
「はぎ香、元気だった?あれは大丈夫だったろう?」
青樹の言葉に、わたしは応えなかったり応えたり…『光彦は?』と聞いてみた。
「光彦?アァ…僕はね、昨日からE県に出かけていて今になったんだ」
青樹は、わたしを見つめ続けた。わたしも負けずに見た。
「ピクニック?」
あぁ…と、わたしは少し打ち解けて応えた。
「資料館で走るの。そしてね、水球するの」
「君、うまいものね。右も左も」
「…」
「お昼には帰って来るの?」
| 固定リンク

