第二章 禁断・はぎ香<19>
「いいえ。お昼からは資料室で勉強…って言っても、ほとんど趣味だけど」
「趣味?」
「うん。あの黄金時代の衣裳を調べたり、あの時代の音楽を聴いたり、そんなことをしているの」
「そう。レポートは、あと何枚書くの?」
「あと50枚近く。まだ半分もいかなくて、書きたいことがありすぎて、支離滅裂になってるの」
止まらずに話すわたしに、青樹はニッコリとして聞いていた。
「君の目は僕と同じ色だね。光が入ると緑にみえる…だからなのかな。昔、君と僕と、兄妹じゃないかって間違って言われたことがあったよ…僕は、君のお父さんと、やっぱり似ている?」
わたしは頷いた。そうなんだ。だからかもしれない。いつのまにか打ち解けてしまう。何かしら、ゆるしてしまう。憎みきれない弱い気持ちになってしまう。
わたしは、前から、健康カードと一緒に、光彦と並んでいる古い写真を恋びとの写真みたいに入れて持っていたけれど、最近もう一枚、父と母の結婚記念の写真も、縮小して持ち歩いていた。
二人の古風な正装の美しさも少し自慢だったわたしは、青樹に見せてあげようと、すぐに嘘じゃないって分かるからと、取り出した。
受け取って青樹は、左手の人差し指と長い親指とで固い写真の角を支えて、見入っていた。
父は長い黒髪を後ろで束ねていたので、一見、短い髪の人のようだけど、その分、額の形や顔の輪郭がはっきりと判って、確かに、父と青樹は、一族と呼びたいほど、よく似たタイプの顔立ちだった。
「沙羅…とても綺麗だね。お父さん…は、今の僕と同じくらい若いみたいだけど、何歳で結婚したの?」
「二人とも十六歳だったの」
『十六歳!?』と、青樹は驚いていた。『もっと大人に見える!』
「冬至の日が好きだったから、その日に結婚したの。ね?似ているでしょ?青樹…」
いつのまにか、わたしは、嬉しいみたいに言っている自分に気が付いて、口をつぐんだ。
青樹は、ゆっくりと、わたしの手に写真を戻そうとして、ふと、裏書きに目を留めた。「冬至の日。沙羅(さら)十六歳。湖秀(??)…十六歳。…」
「『みづほ』って読むの」
説明するわたしの目を、青樹は深い眼差しで、じっと見つめた。
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